pandalzen

 酒とパンダとごはんとコドモ。無理せずラクに、まいにちのくらし。

ニシノユキヒコの恋と冒険

ニシノユキヒコの恋と冒険

初めはいろんなニシノユキヒコという男を描いた短編集かと思っていましたが、全部同一人物でした。中学生から中年までに彼が出会ったいろんな女性の目線で描かれています。彼は顔もよく清潔、物腰もスマートでふわりと彼女たちの心の中に入ってくる。でもどこかうわの空でつかみどころがなく、彼女たちはそんな彼の内側に決して触れることのできない絶望を感じ取って離れていく。
「僕はどうして女の人をきちんと愛せないんだろう」そんな彼が哀れでもあり、抱きしめたくもなる。貞操観念が薄くていいかげんなのになぜか憎めない。だけど本気で愛してもけっして自分だけのものにはならないと、気づきながらも惹かれてしまう彼女たちの気持ちがよくわかる。
悲しくはないけど、「かなしい」物語。恋とは、愛とは、なんと不確かなものなのでしょう。