pandalzen

 酒とパンダとごはんとコドモ。無理せずラクに、まいにちのくらし。

日本沈没

めずらしく男っぽい役柄のミッチーを楽しみにしていたのですが・・・無精ひげが微妙(笑)主役ふたりの次に名前が出てたのに、出番もセリフも少なかった。映画としてはエンディング見るまで気づかないのですが、むやみにいろんな人が出ていて*1笑える。以下、ネタバレです。
観ている間はCGとかそれなりに楽しめたけど、後から考えると突っ込みを入れずにはいられない。脚本が悪いのかな。火山という火山がことごとく噴火したりして日本列島はどんどん沈んで行くのだけど、海外へ脱出できるのは上流階級の人間で、残されて避難所を転々とする間に庶民はまた災害に飲みこまれる。危機に直面した人間はもっとパニックになったり殺戮や強盗をしてでも生き延びようとするだろうに、リュック背負って淡々とボートに乗り込んだり峠を登ったりする。リアリティが感じられない。
そしてなぜか深海潜水艇パイロット役の草磲くんは、最初の方で一度潜って以来、ずっと仕事をしているシーンが出てこない。またハイパーレスキュー隊役の柴咲コウも、冒頭でちょっとかっこいい救出シーンを演じたものの、訓練中のうかつな事故で腕をケガしてからは、もんじゃ屋の気のいい店員状態。たとえ事故で出動できなくても「仕事が休みになる」ほどのケガではなかったと思うが・・・。ふたりの交流シーンを増やすための苦肉の策かしら?
草磲くんの同僚のミッチーは妻と子どもを海外に脱出させて自分だけ日本に残り、日本を救おうとする。そしてパイロットの腕を買われて日本沈没を食い止めるために海底に爆弾を仕掛けにいくのだけど、あっさり死んでしまう。死ぬのはまあいいとして、もう少し伏線が欲しかった。妻子が登場するのは避難後に送られてきたビデオレターや写真だけで、実際に家族とふれあうシーンもない。これでは彼が死んだところでせつなさも悔しさも感じられず、観客は悲しめない。実際映画の中でも誰も彼の死を悲しんでおらず、計画を進めている博士(豊川悦司)が「焦らせた私のミスだ」と言うだけ。草磲剛が出動するための前座でしかない。
その豊川悦司演じる博士も、役人に暴言を吐いたりして破天荒な感じなのはいいけれど、データをコンピュータに入力して1年で沈没という結果が出た途端、「ふざけんな」とか叫びながら液晶パネルをグーで殴って煙出してるし。・・・マジですか?
また、冒頭のシーンで地震にあい父を亡くし、母親は意識不明という不幸な少女を演じているのが福田麻由子ちゃん(彼女はよかった!)なんだけど、柴咲コウに助けられ、そのまま彼女の親戚のもんじゃ屋で暮らすことに。あんな災害にあってひとりぼっちになったらもっとダメージを受けてもいいはずなのに、早々に明るさを取り戻している。唯一のトラウマシーンが、再び小さな地震が起きたとき、揺れがおさまっても机の下で怯えているところ。しかしそんな彼女を後ろから抱きしめて「もう大丈夫だよ」と言う草磲くん、それはやばいんじゃないのか?彼女と草磲くんはそこまで親しくないのでは・・・。
さらにひどいのは柴咲コウ草磲剛がまあ恋愛関係になるのだけど、かけらほどの説得力もないこと。お互いに「いい人だな」と好意を抱いてる程度ならわかるけど、一体どの時点でふたりは恋に落ちたのかがまったく不明。草磲くんが日本沈没進行中にイギリスから仕事のオファーを受けて、手さえ握っていない柴咲コウに「いっしょにイギリスにいかないか」と持ちかけるのは唐突すぎる。しかも柴咲コウだけじゃなく福田麻由子も連れて行って「3人で幸せになろう」ってどういうことなん?
結局その話は「自分だけ幸せになんてなれない」と断られるんだけど、そこには彼女が阪神大震災で家族全員を失った過去があり、二度と悲しい思いをしたくないからもう誰も好きにならないという決意があった。
最終的にはそれを告白した上で思いが通じ合い、熱い抱擁&キス。でもなんか中途半端。その後ふたりはテントに入り、彼女は「抱いて」と言うのに草磲は「生き残ってイギリスで会うまでは抱かない」とか言って断るの。そして翌朝彼女が目覚める前に姿を消す。自分の命を投げ出して日本を救う覚悟をしていると書き残して。そして彼は、潜水艇で海底に爆弾しかけに行って日本沈没を食い止める。アルマゲドンばりの特攻で。
・・・でもそれってひどくない?愛する人を失いたくないから気持ちをセーブしてた相手を盛り上げるだけ盛り上げといて去っていくなんて自分勝手すぎる。だったらそっとしておいてほしかった。個人的には、愛し合ってるなら忘れ形見として子を宿すくらいの方が未来に希望をつなげられたような気がするけど、まあそこまで深い愛情がふたりの間に存在しているとはとても思えない。
題材と映像は壮大だけど、人間が人間として描かれていない、表面的なエピソードだけの物語。もっといいやり方はあっただろうに・・・もったいないです。
余談ですがやっぱり木村多江は幸薄い役ですな。

*1:たとえば庵野秀明安野モヨコ夫妻