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生きさせろ! 難民化する若者たち

生きさせろ! 難民化する若者たち

ここ数年、ワーキングプアネットカフェ難民という言葉をよく聞くようになっていますが、これが日本の現状なのかと思うとそれだけで鬱々とした気分になる一冊です。
働いても働いても生活保護以下の賃金しか稼げず、一度貧困になってしまうとそこから抜け出すことがいかに難しいかということが実際の例(時には実在の企業名も)を挙げて書かれています。特に短期の派遣や請負等の非正規雇用者は、劣悪な労働条件で賃金を叩かれるだけ叩かれ、健康管理は軽視されて死にそうになったらクビにされるという「使い捨て」が、いつの間に当然のようにまかり通るようになったのでしょう。
このような不安定な生き方を強いられているのは現在20〜30代の若者が多く、特に団塊ジュニアと呼ばれる、「壮絶な受験戦争をくぐりぬけたら就職時にはバブル崩壊で就職難民」となった世代が多いのは私自身も身にしみて感じます。この時代に楽々就職できたわけもなく、ギリギリのところでかろうじて自立できたのだと思っていますから。
ただ著者自身も受験に失敗し、就職もままならず苦しんだ経験を踏まえて書いているようですが、「本を書くようになっていなければ今も彼らと同じ貧困層だった」的な視点がちょっと気になります。そして貧困を社会のせいにしてしまえばそれで済む問題でもないと思います。読みやすい本ですがその分浅いと感じる部分も。
ただ実際にワーキングプアと呼ばれたりホームレスになる若者は、決して特別怠けていたわけでも夢ばかり見ていたわけでもない。むしろ、正規雇用者になれない言い訳を「やりたいこと」にでもすり替えなければ自分が保てないのだと思う。実際バブルの頃は就職希望者のうち非正規雇用に就く人は5%くらいだったのが、今は40%に達している。これをすべて「自己責任」と言ってしまうのはあまりにも酷すぎる。しかし貧困にあえぐ当事者も自分が悪いからだと思っている。いや、思わされている。確かに、ここまで負のスパイラルにはまる前になんとかできなかったのか・・・と思ってしまう部分もあるのでしょうが。
規制緩和によって、富裕層はますます富み、貧困層はますます貧しくなる構図はさらに加速していく。国や行政は福祉を切り捨て、企業に都合の良い立法を行い、自己責任・能力主義成果主義の名の下に労働のコストを下げ、貧富の差は拡大するばかり。
政府は少子化対策とか簡単に言うけど、自分ひとり生きていくことさえできない賃金しか得られないような社会で、どうやって子どもを産んで育てるの?そしてもし産んで育てられなくなったら、日本にもストリートチルドレンが現れるに違いない。「そうなった時、『だらしない親が子どもを路上に捨てるようになった』と言うみのもんたの眉間の皺までが脳裏に浮かぶ」という一文が印象に残りました。
国は、将来税金を払える人間を増やすために今何に投資すべきか、よく考えてほしいもんです。