生きてるだけで
- 作者: 雨宮処凛
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 新書
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あくまで個人的な感想なので。今の若い失業者がすべて「怠け者」であるはずがない。高学歴なのにロクに就職もできず食べるのに困るような生活を強いられる人間は好景気のときにはほとんどいなかったわけだから。日本の将来を担うはずの若者がかつての外国人労働者並みの賃金でこき使われていて自立なんてできるはずがない。日本はいつのまにか企業や雇用者側が都合よく労働力を調整できるような社会になってしまっていた。
ただ、この時代に生まれた人がすべてそうなっているわけではないことからも、すべてが時代や社会のせいでないことも確か。現在問題になっている雇用形態は、一度足を踏み入れると負のサイクルから抜け出せなくなる怖さがあるらしいけど、そうなる前にもっと方法はあったんじゃないの?と思う部分もある。
しかしながら、現在の若者を取り巻く労働環境はどんどん悪化して、思い描いていた自分になれていないことがさらに自尊感情を低下させる。運よく正規雇用されたとしても、今の組織は即戦力ばかり求め、育てる環境がない。ちなみにこのネットラジオは、運営もすべてニートの人たちで行ったらしい。だから当然右も左もわからない奴もいるし、途中で投げ出して逃げる奴もいる。彼らを使えるように教育していく手間はそりゃ今の企業はしないだろうな。
ただ問題は雇用者側が人材を「育てる」労力をかけなくなったこともあるだろうけど、ウチの業界でも新年度が始まって「思っていたのと違った」と一週間で逃げ出した新人がいるらしいから、やっぱり最近の若者は根性がない(奴が多い)のも事実。そんな人間を有能だと判断したなんて、採用側の目も節穴かよ(苦笑)
身近に働けない(働かない)若者がいても、ここまでの事態の深刻さは実感できない。なぜなら、それは彼ら自身の努力不足もあるだろうと思うから。ただ「バブル期に何も考えず就職した者よりニートの方が社会のことを考えてる」という内容は一部納得。確かに日々仕事に追われていると社会のシステムにまで気が回らないし、事実私も失業してた期間にいろいろ考えたこともあったので。ただしそれを言いっぱなしではただの遠吠えではないかと・・・。
現在のニート、フリーターの中には「就職できなかった」のではなくボランティアなどの活動で頑張っていた人もいる*1という話ですが、ボランティアは社会にとって必要なものかもしれませんが、必要とされるサービスにはお金がかかり、言い換えればニーズのあるものはお金になるというのが社会でもあると思うのです。私自身ボランティアというものに懐疑的で、あくまで「余裕のある人がするもの」「食うに困っている人にはできないもの」*2だと思ってしまうのですが・・・。
とりあえず、ニート、フリーターを前面肯定しているところには共感できません。すべてが自己責任ではなかったにしても、選択の余地はあったはずだから。著者自身も自殺未遂を繰り返しているけれど、そういう行動を起こす人と起こさなかった人、前者の方が明らかに辛い状況だったかというと、それはあくまで自分の中で処理した結果だと思うので、比較のしようもないこと。誤解を恐れずに言うと、辛いときに自分や周囲を傷つけることを選ぶのは、苦しみの度合いじゃなくて思考の方向性だけだと思うのです。苦しみを否定する気はないし、どんなときでも前向きに生きろなんて無神経なことをいうつもりもないけど、いろんな選択肢を持っていた方がいい。
生きる権利は保障されなければならない。しかし働かなければ社会とつながりつづけることはできない。少なくとも、家族や友達と関係を持続させるスキルは最低限持ってないと生きることすら難しい世の中なのだから。