pandalzen

 酒とパンダとごはんとコドモ。無理せずラクに、まいにちのくらし。

紙が白いです

ホームレス中学生

ホームレス中学生

一気に読みました。テレビで公表してるような貧乏ネタが延々続くのかと思ったら意外な構成でした。正直、泣きました。これから読む人のためにたたみます。
公園生活時のネタはほとんど知ってるものが多くやや物足りない部分はあるものの、そのホームレス生活を経験したからこそ感じる、人やモノのありがたみが非常にわかりやすく描かれています。コンビニでお菓子をねだる子どもとその父親を見て、あっさり買い与える親に「甘やかすな!」子どもに「お前も甘えんな!!」と心で叫んだり、学校でしゃべりながらおにぎりを食べる同級生を見て、「もっと真剣に食べ物と向き合え!」とはらわたが煮えくり返ったり、1日一膳しか食べられないごはんを兄弟で一口10分以上かけて噛み、味がなくなっても噛み続けるとまたフッと甘みが感じられる現象を「味の向こう側」と呼んでいたエピソードなどは秀逸です。
しかしながら学生時代の思い出などは事実なんだろうけどカッコつけたくなかったのか、せっかくいい話なのに無理矢理オチをつけたかのようなまとめかたがあってちょっと残念。笑いに変えたいならもっとうまく書かないと。
それにしても「東京タワー」しかり、「オカンと息子」の話はなぜこんなにも泣けるのか。幼い頃、母親のパート先まで毎日迎えに行ってたことや魚が苦手だとダダをこねるときれいに骨をとって食べさせてくれたこととか、お母さんとの思い出の描写には並々ならぬ思い入れを感じます。
全編を通じて漂う空気は彼の人柄なのか、とても温かみがあります。こんなありえない境遇の中でも出会った人すべてに感謝して生きるなんて、なかなかできないことですよ。読後感のいい一冊です。